交通事故事業部で濃密な経験をしたという自信は、その後いろいろな案件に携わる中で影響が大きかった
入所1年目、2年目にどのような業務を担当してきたか
家永1年目はもちろん交通事故事業部での交通事故案件ですよね。交通事故の案件を実際に修習のときに見たりしてたかもしれないけれども、実際担当してみてどうでしたか?
小林まず思ったのは、司法修習中に体験した裁判所目線は、当事者が提出した書面や証拠をもとに事故態様がどうであったかを認定する、出来上がった主張や証拠からいかに認定できるかというだけの話だったと思います。
弁護士で被害者側の代理人としてやってるときに何が大変かというと、被害者の人は体の痛みがあり、事故前みたいに働けないというすごい困っている状況で、そこにどういう風に弁護士として関わって行くのかを考えて対応しなければなりませんでした。被害者の方も日々の生活が大変なのでいろいろな要望が出てきますし、依頼者のケアはとても大変だと感じていました。
家永依頼者であり、被害者だからね。本人にとっては依頼してるけど、被害者の立場としていろんな人に言いたいこともあるだろうし、なんで自分がこんな目に合わなければいけないんだって思いの中でね、依頼されているだろうから。
小林被害者になった結果、仕事ができなくなり、収入も途絶えて生活が変わってしまったという、本当に助けてくださいという強い思いを持った人って、弁護士に依頼していなければ、自分で保険会社と交渉したりしないといけない。そういうときに依頼を受けた後は、弁護士としてどういう風に依頼者と話して、依頼者の置かれた状況をなるべく理解してあげるとともに、どういう風に依頼者の置かれた状況などを保険会社と交渉したらいいのかというところに難しさを感じるときもあります。
それは、所謂交渉が相手方との交渉だけだと思いきや、依頼者との関係性をうまく保つためには、依頼者との協議というか、依頼者にも今後の流れや見通しをちゃんと伝えて理解してもらった上で案件を進めていかないといけないんです。そこをきちんとやっておくと、その後の案件もスムーズにいくし、依頼者も今どういう事態で何が起こっているのかを分かってくれるので、最終的な解決時にすごく満足してくれた形で終わることが多いです。事故態様や依頼者が置かれた状況、依頼者が困っていることなどをきちんと理解したうえで、見通しをきちんとこちらで用意して、それに添った形で進んでいくと、スムーズ且つ迅速に終わるから、満足度も高まったという印象をもっています。
家永迅速に処理することは、うちだとやはり意識が強かったりしますか?
小林そうですね。進捗システムという事件管理システムがあるのでそれを使って事件管理してるのと、あとは交通事故事業部の事務局については交通事故事業部の弁護士と同様に交通事故に特化して働いているので、弁護士も事務局も次に何をすればいいのか大体把握できているので、次は何の資料が必要とか、次は加害者に書面を送らないといけない時期だとか、それが滞っていないかっていうことを共通認識として持っています。弁護士も事件の状況を認識しながら、事務局からも支援してもらえるっていう体制があって、システマチックに弁護士も事務局も事件管理が出来ているから、他の事務所よりも迅速に処理できているという意識は強いと思います。
家永お客さんに迷惑をかけないようなケアができるように、事務局を含めていろんな人の目が事件に行き届いているっていうことでしょうか。
小林そうですね、しっかりとシステム化されていることが要因かなと。
家永自分だけが頼りにされるんじゃなくて、事業部全体として進捗を管理して、クライアントの利益を皆で守って行こうっていうのところがあるんでしょうね。
小林あとは事件進捗がどのようになっているか弁護士同士での会議もあったので、交通事故事業部に所属していた日向先生や河上先生と一緒に月一回の頻度でやっていて、今このクライアントについてはどういう状況で次に何をしようとしているのか、なんでこんな時間がかかってるのかということを弁護士同士で確認する環境も用意されています。その進捗会議の場で先輩弁護士からもちろんアドバイスももらうので、ここはちょっとこう迷っていると相談すると先輩弁護士からこういう風にすればいいっていうのを学べるのが良い機会だったと思います。
自分から意識を張り巡らして動けば、先輩弁護士や同期の弁護士からいろいろ学べる環境はあるという風には感じていた
家永話の途中にも出て来たけど、交通事故事業部にいる間の先輩からの教えというか指導などはどうでしたか?
小林交通事故事業部にいる間は、報告するときに方針は自分なりに立てて、いまこういう状況なのでこういう風にしようと思ってるんですがと確認しながらやってました。そこで先輩弁護士はアドバイスもしてくれるし、とりあえず進めてみてくれということで、やってみて体得するように勧めてくれるとか、そういうのもよかったかなと思います。
家永やればわかるからと(笑)
小林書面はかなりチェックされましたね。書面のチェックは交通事故事業部で日向先生とか河上先生にチェックしてもらって、それで僕の今の文書スタイルの基礎ができたと思ってます。表現の仕方や特に構成の立て方。読みやすいように、今何を書いているか、何を述べているか分かりやすいように書くこと、文章の中でそこに気をつけるようになりました。裁判所に出す書面も、事務局に裁判所に提出する前に誤字脱字などをチェックしてもらうんですが、読みやすいとよく事務局からも言われますね。その意味では所謂OJTとして文書チェックもしっかりしてもらえたと感じています。
あとはパーティションがないので、交通事故事業部に所属している日向先生や河上先生がどういう電話対応しているのか話し振りを聞けます。相手方の対応はわからなくても聞こえてくる内容から、きっと今こういう状況で、河上先生たちはこういう風に話してるんだとか推測しながら聞いていました。交渉がまとまったという結論を聞くと、そういう風にまとめる方法があるんだと電話を聞いているだけでも勉強になりました。日向先生も河上先生もスタイルが違うので、それぞれから学んで生かすことが出来たのではないかと思っています。
あとは交通事故事業部には、同期の67期の辻先生もいたので、辻先生の話し方も聞けましたので、先輩弁護士が手とり足とりあれやってこれやってって指示してもらいながらという、べたっとついて教育されるわけじゃないですけど、自分から意識を張り巡らして動けば、先輩弁護士や同期の弁護士からいろいろ学べる環境はあるという風には感じていました。
家永1年半だけど、その間だけでも十分に、自分の弁護士としての基礎は出来たかなっていう印象は持てましたか?
小林そうですね、それが出来ていたから一年半交通事故事業部で経験したあとに、弁護士法人ALG&Associates 千葉法律事務所に行って所謂民事事件や家事事件など、自分が取り扱ったことのない分野も苦しまずに担当することが出来たかと思います。最初は千葉の所長の美代子先生と相談等に一緒に入りましたが、すぐ自分一人で新規相談などに入るようになりました。それでも交通事故事業部で培った依頼者への話し方、安心感の与え方、見通しの立て方などに気を付ければ依頼してもらえました。自分の受任した案件についても試行錯誤しながら処理していくことが出来たということで、交通事故事業部で1年半やってきたという自信というか自負というか、学んできたことや自分でやってこれた自信というのは千葉に移ったあとも影響が大きかったと思います。
家永家事とか一般民事という類型は、交通事故事業部にいる間にそれらに関する法律や制度に触れる機会はあまりなかったと思うんだけど、直接扱ったことがない法律や制度に臆する部分や、心配だった点はありましたか?
小林正直、知らない出来事に出会うこともありました。その場合でも間違ったことがあったら、「すみません間違ってました」と素直に言えばいいだけで、そこは自分の下調べが足りなかった部分は後で訂正をしていました、そこはクライアントとの信頼関係がしっかりしていれば、進み具合や相手方の対応にしたがって方針を変えたとしても、「そうなんですね」と納得してもらえますので、例えばいきなり離婚案件が入ったから、どうしよう、どうしたらいいんだとかという臆したりする部分は特になかったと思います。
離婚の裁判などもやはり書面を作成していると、交通事故で培ったどういう風に構成を組み立てたらわかりやすいかとか、どういう主張の順番にしたらわかりやすいかといった観点を、離婚事件に転じて対応していけばよかったです。千葉に異動になって三ヶ月ぐらいで離婚などの裁判にも対応できたのは1年半交通事故事業部で濃密な経験をした自信というか自負っていうものは、確実に千葉に異動しても役に立っていて、いろいろな案件に携わる中で千葉でさらに自信を発展させたっていう印象を抱いています。