逆算の観点を持てるかどうかが非常に大事な能力
所長に必要な能力と向いている人
家永人を教育するってどう思ってますか?1年目2年目のころって教わる側じゃないですか。今の話のなかで事務所を発展させていくであるとか、後輩が入ってきて指導するとかっていうことが出ている。むしろそっちも業務がかなりの幅を占め始めてしまっているのかなと思うんですが、自分の中で自分が事件を処理することと、後輩を指導することと、ここはどんな風に考えてます?
小林もちろん自分の案件を自分で処理するっていうことが自分の成長につながるってのはもちろんそうなんですけど、結局教育や指導をするっていうのは教えながらも僕自身が学んでるなって思うことがよくあります。
例えば、僕がこういう風に考えているんだっていうのを説明したりしてるんですけど、それはあくまでも僕自身の考え方で、もちろん後輩たちの考え方と違っているときもあります。そこで僕は自分の考えを別に強制するわけじゃなく、例えばその考えだとここはどうなるんですか?ここでこう言っているのに矛盾しないですか?などと議論する。そういう風になったときに、自分の中でも改めてもう一回自分はこの案件をこういう風に考えてるんだって自分なりに考える機会にもなるし、相手の考えを取り入れる機会にもなっていると思います。
後輩達が処理している案件であっても、教育や指導を通じてポイントポイントで自分も関わってやっていけるし、且つ、自分の案件だと正直気付けない、自分ひとりじゃそこまで手が届いていなかったところも、考えてくれてたりすることもあります。自分の中でも後輩たちから教えられる部分もあったりするので、そういう意味では教育・指導っていうのは後輩を育てるっていうことだけじゃなくて、自分自身を顧みて、もう一回自分の仕事を見つめ直すことになりますよね。自分がまだ足りてない部分を後輩を通じて見つけて、そこも補って行くという意味で、また自分の案件を処理するのと違うやりがいというか、結果的に必ずしも自分の案件ではなくても自分の中で成長の糧になるなというのはあります。
家永所長に必要な能力だよね。いま小林先生から話を聞いている中で、仕事のやりがいとかを話していく中で自然と、自己中心的ではないというか、後輩だったり、事務所の話を自然に見ながら自分自身がどこまで出来たのかとか、今年の自分が頑張ったのは自分の実感としてきっとありますよね。その成果として何が生まれただとか、どういう風に若手の弁護士が育っただとか、どれぐらいの事件まで出来るようになったとか、事務所自体の売上がどの程度まで伸びてきたのかとか、課題はなんなのかというところを視野広くね。ようするに弁護士って職人的なところがあるので、職人として、その自分の事件を深く掘り進んで、この事件のベストと言われる解決を導くのは、それはもちろん弁護士として必要な能力だし、やってくれたらいいとは思うんですけど。
ただ所長として必要なのはやっぱもう一歩後ろに引いた目も合わせて持ってもらう必要があって、事務所の全体を俯瞰する、それは弁護士の教育もそうだし、所長としては事務局の教育ももちろんそうだし、あとは予測ですよね。事務所としてこれからどういう風な成長を目指していかなきゃいけないのか、そのためにはどういったステップを踏まなきゃいけないのかっていう、そのビジョンに対して逆算して物事を考えるっていうところは必ず必要になってくるのかなと。
逆算の観点っていうところを持てるかどうかっていうところが、俯瞰して物を見れるかとか、将来事務所をどうしていくかってことを考えるにあたっても、非常に大事な能力かなと思います。あとは信頼を得ること。俺の背中について来いだけではやっぱりダメなので、コミュニケーションですよね、自分の考えをうまく下に伝えられるってことはどうしても大事になってきますね。うちで、新人の弁護士向けの説明会なんかでも、よくリーダーシップを取れる人って話はするんですけど、リーダーシップの取り方って人それぞれで。自分が理想とするリーダー像みたいなところを持ってる人もいれば、自分のやり方で皆についてきてもらうってやり方もあれば、いろいろかなとは思ってます。
ただ、うまくいってないリーダーシップの取り方に自分で気付いたときは、それは自分の性格であってもやめなきゃいけない。自分の性格上ああいうのは向いてないとか、ああいうのはやれないとなってしまうよりは、リーダーシップって技術的なところもあって、やり方間違ってるんだなと思ったら方向転換する。それで、この子とはこのやり方では合わないんだなとかっていうところを見ながらやれる人でないと、なかなかうまく事務所運営回していけないのかなっていうところはあるかなと思います。
家永あとは向いているのはポジティブな人でしょうね(笑)失敗しても前を向くじゃないけど、転んだって起きればいい。さっき小林先生のクライアントとの信頼関係の作り方の話の中でもあったけど、自分の話がちょっと方針転換というか、変えなきゃいけないなってなったときには、クライアントとの関係を調整しておいてそこでうまく説明できるかどうかというのを大切にしてるって話がありましたよね。そこは事務所運営も同じで、やっぱ失敗することもあるしなかなかうまくいかないこともあるけれどもそれを糧にして、次の一歩をどう踏もうかっていうような上昇志向を持ってポジティブに取り組んでくれる人のほうが事務所としての、事務所運営のやりがいみたいなところは感じとりやすいのかなと思いますね。
所長になってきた人は、自分ひとりで処理出来る事件数で満足してない人は所長の中には多いのかなと思いますね。自分がやれる限界って、小林先生も1年、2年ってやってる間で、自分っていうのは毎年これぐらいの事件処理するのは限界だなという風には思ったと思うんです。それを限界にして、自分自身まあ毎年これだけの件数をやっていけばいいんだなで終わるのか、そうではなくて、毎年たったこれだけしかできないんだったら、仲間を作ってそれを大きくしていったほうが自分としての能力も幅広がって行くし、人間としても成長できるかなと思ってくれる人はやっぱり向いているのかなと思います。
うちの場合、3年目ないし4年目ぐらいで所長に就任する人はしていて、大体そういう人たちは自分から手を挙げてきてますよね。自分から所長になりたいと、法律事務所ひとつ運営したいという意欲を持ってやってくれている、そこはもう完全にスタートラインというか。最低限そこがないと始められないのかなと思いますね。
家永所長あとどんな人がいるかな。キャラクターとして共通性はないですよね。各事務所ごとにカラーを統一しようとかはないですが、ただ弁護士同士のコミュニケーションはなくらないようにというか、さっきパーティションの話もあったけど、見て聞いて、話して学んでというところは弁護士として必要だなと思っています。だからこそ、事務所に複数の弁護士を所属させて、その中の議論のなかからいい仕事ができるっていうスタンスは共通するところだし、それは弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所もそうですね。そこも含めて共通するところなので、そこだけはあまり変えたくないなっていう思いがあります。それ以外の点に関してはどこの地域で何が必要だとか、どういう風に進めていきたい、どういう風に育てていきたいとかっていうところは、ある程度所長に任せているかなと思います。だた逆に言うとそういう判断を決断を自分でできる人っていうのは必要になってくるかなと思います。